hirohirohirohirosのブログ

地方国立大学に通う情報系学部4年

AI Quest2021に参加しました

 2021年10月頃から始まったAI Quest2021に参加し,先日無事終了出来ました(課題を全て提出期限内に提出することでGOLD修了が与えられます).普段なじみの無いビジネスの視点も組み合わせて,AI活用について学ぶ事ができて非常に勉強になりました.

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AI Questとは

 https://aiquest.meti.go.jp/2021/

 経済産業省主催で,2019年度から開講されている教育プログラムです.

参加したきっかけ

 SIGNATEからAI Questの紹介メールが届いた事がAI Questを知ったきっかけです.SIGNATEやkaggleのようなコンペにプラスして,ビジネスサイドからの検討も学習できると言うことで興味を持ち参加応募しました.

選考

 応募には基本的な個人情報や自身の今持ってるAI技術レベル,志望動機などの提出に加えてアセスメントというものに取り組む必要があります.アセスメントは一般的なコンペと同じで,ホテルの情報から宿泊価格を予測するという内容でした.

 募集人数が600人程度とあり,最初の提出で150位ほどを取れたのでそこからほとんど手を加えず合格となりました.後に他の参加者の話を聞くと600位を下回っている方もおられ,アセスメントとはいえそこまで激しい競争があるわけではないのだと思います.

第一ターム

 第一タームではテーマが3つあり,応募の時にどのテーマで取り組みたいか選択します.テーブルデータの需要予測,画像データの異常検知,画像データの自動見積もりの3つがありました.わたしはせっかくなので全く経験の無かった画像データの異常検知に参加しました.

 それぞれ選んだテーマに対して3つの工程に取り組みます.架空の企業に対し,課題の発見,AIモデルの作成,意思決定者へのプレゼンを行います.

  • 課題の発見では,架空の企業の情報が与えられ,役員から漠然とした課題を提示されます.そこから要求定義のために何をヒアリングするのか,どこをAI化しどのようなAIが必要かの要件定義などを行います.補助教材としてAI導入のプロセスやヒアリングのコツなど,AIのビジネス実装にあたって必要な事が端的にまとまった資料をいただき,大変勉強になりました.
  • AIモデルの作成では,上の工程を踏まえて実際にモデルを開発します.ここは一般的なコンペとやっていることはほぼ同じだと思います.私の参加した異常検知ではPBでもF1score=1を出した参加者が複数人いました.
  • 意思決定者へのプレゼンでは作成したAIを元に,新しいビジネス提案を行うプレゼンを作成します.コンペで一位の人のモデルを使って提案するのが本来でしたが,一位のモデルはF1scoreが1,つまり全ての画像に対して正しく判断できているのでこれをビジネス提案に使うのは不味いだろうという声もいくつかあがり,自身の作成したモデルで提案資料を作っている人も居ました.わたしは”100%の正答率を出しました(全ての画像を正しく判別することを保証するわけではありません)”というような形で注意書きをするようにしました.作成したスライドはこんな感じです.

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 AIモデルの作成とプレゼンは参加者どうしで競い合い順位を決めます.AIモデルは一般的なコンペと同じようにスコアによって順位が決まります.プレゼンは,他の参加者7人に自分のプレゼンを見て貰い採点して,その点数で順位を決めます.わたしも他の7人のプレゼン資料を見て採点しました.

 特にプレゼン資料に関しては優秀者のプレゼンが公開され,作成者から何を意識して作ったのかなどの解説があり大変勉強になりました.上位優秀者のプレゼンはどれもみやすく,学ぶ事が多かったです(今すぐあのようなプレゼンが作成できるとは思いませんが……).

第二ターム

 第二タームでは何をするか二つから選択出来ます.一つ目は第一タームと同じように3つのテーマから課題の発見~プレゼン作成までを行うプログラム.二つ目は第一タームで学んだことを活かし,実際の中小企業に対してAIビジネスを提案するという取り組みです.わたしは二つ目の協働を選択しました.

 協働はチームで参加します.チームの作り方はslackにチーム作成専用チャンネルが作られ,そこで募集をかけるという形でした.わたしは既に学生のグループを作っていたので,そこから追加で募集をし,学生3人社会人2人のチームで参加しました.

 チームの紹介文などを作成したら,それを中小企業が見てどのチームと協働したいか決定します.数が合わなければ,チームを作成しても相手企業から選択されず,協働出来ないこともあると運営から言われており,協働できるか不安でしたが,ある企業から選択され嬉しく思いました.周りの様子を見ると,全てのチームが協働できていたように思います.なおこちらのチーム側から中小企業を選ぶということは一切出来ず,選ばれた企業と無条件に協働するという形です.

 実際の企業の方とオンライン上で現状の課題を聞き,データを頂き,進捗を発表したりするミーティングを週1で行いました.企業の方とやり取りをすることは初めてで大変緊張しました(チームに社会人の方がいなかったらどうなっていたかと思うと……).

 詳細は書けませんが,最終的に機会学習を使わないルールベースのプログラムを提案し,従来の手法より高い性能を出す事が出来ました.

 最終日には副社長のような役員の方も参加する中で最終プレゼンを行いました.AIやプログラミングは全く知らないであろう方の前での発表なのでどう分かりやすく説明するか苦労しました.特に,質問を受けて,その回答の中で”外部ライブラリ”をどう説明しようか困り,ぐちゃぐちゃな説明になってしまったことを少し後悔しています.しかし,役員の方からは高評価を頂き嬉しかったです.

プログラム参加者との交流

 AI Questでは専用のslackワークスペースが作成され,そこで参加者同士で交流が出来ます.全体の参加者の内8~9割が社会人で学生は圧倒的小数派でした.積極的にLT会を企画されている方がおり,わたしもそれに参加しました.Biツールの便利さを知りました.

 また,オンラインチャットのようなもくもく勉強をしたり,課題について議論したりできる場所が24時間開放されており,そこも交流としてよく利用しました.毎週決まった時間には運営が主導して交流会が企画されて,そこでいろいろな方と会話しました.働きながら,子育てしながら,このAI Questに参加してる人の話をたくさん聞けて,将来の働き方,生き方について学ぶ事が多かったです.

 slackのチャンネルを参加者が作成することもできていろいろなチャンネルが作成されていました(python学びあい,e資格g検定,書籍Web情報共有,etc).頻繁に投稿がなされ,そこを見てるだけでも学ぶ事が多く,有益なワークスペースになってるなと思いました.

 学生限定チャンネルも作成されていました.そこで一緒に学ぼうという4人のチームが出来てわたしも参加しました.このチームでSIGNATEのSTUDENT CUPに参加して9位の金メダルを獲得できました.これが出来たこともAI Questの縁によると思うと感謝です.

サロン特別編

 運営が開催した特別なサロンにも参加しました.一度目は西洋音楽室内楽に触れるサロンでした.室内楽という指揮者のいない演奏を配信で聴き,演奏者から室内楽について直接聞くという内容でした.音楽について全く知識はありませんでしたが,各楽器がどうやって音を揃えるのか,誰が曲を引っ張っていくのかなどが繊細に決められていると言うことを知って面白かったです.指揮者というリーダーのいない中でどうやって楽曲を作り上げるという点は協働のチーム開発に繋がる所もあったと思います.

 二度目は西洋絵画を通して見ることについて考えるサロンでした.バンクシーやマネ,ピカソなどの作品を見て,芸術家が”見る見られる”ことについて何を表現しようとしたのか解き明かすと言った内容でした.音楽に比べ抽象度が低く,何を言っているか分かりやすくて面白かったです.

 (AIや開発に直接どう関係するのかはよく分かりませんでしたが)非常に面白くてこのようなサロンが開催されているのもいいなと思いました.

まとめ

 ビジネスも交えたAIについて学ぶという目的で参加したAI QUESTでしたが,それだけでなく参加者交流など様々な事について経験することが出来ました.AIQUEST 2021参加者の方,このような会を企画,運営して下さった方ありがとうございました.

 今後もAIQUESTは開催されると思われますので,AIに興味のある方,時間のある方は是非参加してみると良いと思います.